平成22年度を終えて
支部長 岡澤宣弘
 一部の住宅産業で仄かな明かりが差してきたと聞き及んでいますが、多くの方々には一向に明るい兆しが見えないまま今年度は終わろうとしているのが実情かと思います。
 この様な中、社団法人愛知建築士会は大変な時期を迎えました。会員の皆様にはお忙しい中、ご迷惑をお掛けしましたが公益社団法人の移行に伴う臨時総会で議題が承認されました。これで平成23年度当初からの公益法人に向けて事務手続きが行われていきます。
 多くの皆様は思われた事と思います。私は支部長になって、この問題に直面したことによって理解する事が出来ました。
 平成23年の終わりには公益か一般かを選択し申請をしなければならない事。一般を選択した場合、これまでに公益的事業を行って来た会は積み上げてきた資産を引き継ぐ公益法人会へ譲り渡すか国へ返上しなければならない事。建築士会は今まで公益的な事業を行って来ました。これを継続して行っていかなければならない使命が有ること。
 大きな理由はこの様な事でした。本会では皆様によく説明はさせて頂きましたと言う話でしたが、私を含め会員の方達に伝わっていなかったのが事実でした。本会も認め皆様にお詫びをして下さいと言われましたのでお伝えします。
 支部活動は委員会を縮小したことで事業は少なくなりましたが活動は活発に行われました。今年度から一般の方にも参加を呼び掛けています。来年度からは様々な方達と交流する事になるでしょう。
 無料住宅耐震診断の事業では年々件数が少なくなってきていますが、ここにきて「耐震改修促進法」の事も有るのでしょう。各市町の動きが見られるようになってきております。2008年に改正され、向こう10年で耐震化率を90%にすると言うものです。これに伴い住宅の耐震改修が進めば良いですが、期待をしたい。 支部として会員の方に少しでも早く情報の発信をしたいと思っています。メール会員の登録を募っていますのでご加入下さい。又、皆様のご要望に答えられますように努力してまいりますのでご助言をお待ちしています。
 今後とも支部活動にご協力とご理解頂きますよう心よりお願い申し上げます。

運河を核にしたまちづくり
まちづくり委員会委員長 永田創一
 昨年10月、新しいまちづくり組織が立ち上がった。「半田運河の会」である。平成19年10月、半田運河の魅力を再発見し、運河を核とした魅力ある地域づくりを目指した事業計画を策定し、その推進を図ることを目的とした「半田運河再活性化プロジェクト協議会」が立ち上がった。建築士会からは私がメンバー18名のひとりとして活動が始まった。そしてメンバーの一人名市大の瀬口先生の提案により、
平成20年2月に、半田の地で、「運河サミット」が開催され、北海道小樽市宮崎県日南市の市長さんはじめたくさんの関係職員の参加をいただくことができた。小樽運河、堀川運河、半田運河には、いくつもの共通点がありその共通点を紐解いていくなかで、お互いの町の魅力を再発見し、交流することで地域の活性化を進めていくことが、これからのまちづくりには必要であります。
 昨年11月には千葉県の利根運河にて第2回全国運河サミットが開催され、半田市長もパネリストとして参加。半田運河の会のメンバーも参加した。来年は宮崎県日南市で開催予定である。
 半田運河の会では、運河周辺の市民のみなさんや半田中学校の生徒たちと一緒に年2回運河及び運河周辺の清掃を行い、運河の活用について関係機関と折衝を行い、できるだけ早い時期に運河に屋形船を浮かべ、市民や観光客に楽しんでいただくとともに、運河周辺の活性化を推進していくとのことです。数年前に建築士会が描いた新川通りのあの街並みがいよいよ実現するのも夢ではない。我々建築士会が、街が活性化するその折々で的確な提案をしていくことが本来の役割であるということを改めて確かめる1年でありたいと思います。

進まない耐震化に挑む
木造住宅耐震診断特別委員会
委員長 成田完二

ローラー作戦 会場風景

ローラー作戦 訪問風景

11月6日半田相談会
 平成14年度から始まった自治体の無料耐震診断事業は今年度で9年が過ぎました。診断実績は平成17年をピークに減少傾向にあります。市町がダイレクトメールを打つなどすればある程度数が出ますが、広報誌や回覧板では申し込みが伸びないのが現状です。
 建っている住宅の約半分が昭和56年以前の建物で、そのほとんどが改修の必要のある強度不足の建物であることからすれば、診断でさえ不十分な実施数と言えます。その不足を少しでも解消しようと、半田市では初の無料耐震診断ローラー作戦を行いました。
 朝の冷え込みはあったものの穏やかに晴れた12月18日土曜日、成岩公民館に集合したのは半田市の職員、県や他の市町の担当職員、地域の役員のみなさんと診断員である建築士たちでした。9班に分かれ、歩いて担当の地域に入り、まだ診断を受けていない対象の家を一軒ずつ訪問しました。
 診断の大切さを訴え、申込書を書いてもらうのが目的ですが、なかなか二つ返事とはいかず、玄関払いをされたり、家庭の事情が複雑だったり、訪問してわかることも数多くありました。それでも地区の役員さんが一緒に回っていただいたので、怪しまれることもほとんどありませんでした。
 この作戦で40件ほどの診断申し込みが取れました。来年度も地区を替え行うということですので、委員会としても積極的に協力したいと考えております。
 また今年度、耐震改修相談会が武豊町を皮切りに半田市、大府市、東浦町で行われ、木造耐震ネットワーク知多から相談員を派遣しました。この相談会で改修に至った事例も報告されています。今後もこうした活動によりこの地域の耐震化を進めていきたいと思います。

青年委員会事業を振り返って
青年委員会委員長 榊原昭仁
 青年委員会は40歳以下の会員で構成されています。今年度頭に公益法人化の準備に伴い、青年部から青年委員会になり、まもなく1年が経とうとしています。部会から委員会へと名称変更がされましたが、組織的に変わったわけではありません。

まちあるき講座後の意見交換会にて
 9月に開催した「考現学的まちあるき講座」は半田支部青年委員会として行った初めての事業となりました。野外活動研究会の岡本信也さん・靖子さん夫妻に考現学について講義を受けました。考現学とは、考古学の手法で現代風俗を採集することで、ありきたりのものを採集し、様々な分野に分類し、いろんな角度から見つめ、考えることです。たとえば「洗濯物干し」と書けば一言で終わりますが、アルミ製もあれば木製もありますが、軒下に刺さった釘だって物干しだといえます。講義の後、名鉄知多半田駅→紺屋街道→半田運河をゆっくり2時間半かけて講師と一緒に歩き、いろんな目線で物事を見る発想の原点を学びました。
 10月には「犬山国宝めぐり」と題して、国宝犬山城、国宝茶室「如庵」、登録文化財「奥村邸」の見学を行いました。生憎、当日は雨となりましたが犬山の散策を楽しんできました。
 また、通年事業として「知多の建築」HP再構築事業を行っています。半田支部のホームページができた当初は「知多の建築」というページがあったのですが、情報が古いのと写真の画質が悪いので、削除されてしまいました。今年度、青年委員会で知多半島の各地に出向き、知多半島を代表する建築に触れるとともに再度写真撮影をおこないました。撮影した写真で地図を作りホームページで公開しています。まだまだ未完成ではありますが、来年度も順次更新していく予定ですのでご期待ください。また、皆様から載せてほしい知多を代表する建築物等の意見があればお聞かせください。将来的には会員の皆様の代表作等も掲載していきたいと考えております。
 次年度も引き続き、多彩な事業を行っていきたいと思っておりますので、皆様のご参加をお待ちしております。また、青年委員会の運営に興味を持たれている40歳以下の方、是非運営にご協力ください。


佐川美術館 茶室
研修委員会 事業報告
研修委員会委員長 太田悟壱
 研修委員会では11月に研修旅行、2月に講習会を行いました。研修旅行では「新旧の和の表現に学ぶ」と題して滋賀・京都を廻りました。今年も東邦ガスさんとチタジュウ(旧日比野グループ)さんのご協賛、ありがとうございました。
 1日目、佐川美術館では茶室を見学しました。陶工が自ら設計プロデュースしたもので、陰影深い素材や暗から明へ導く空間は侘びを表現しながらも強い生命力を感じるようでした。旧来の和の表現を超えた、まさに守・破・離の空間でした。午後は、ミホミュージアムでは外国人による和の例を見ることが出来ました。純和風とは少し違うスパイスが効いた感じで、和という微妙な感覚について考える機会となりました。夜は京都市内に宿泊し、紅葉ライトアップに行かれた方も多くみえました。

聴竹居にて
 2日目、大山崎山荘美術館を足早に見て、聴竹居へ。聴竹居は築80年になる実験的住宅で、エコハウスの走りとも言われます。独特の洗練されたデザインは今も新鮮さを感じました。重文級でありながらも認定されていない為、維持管理はボランティアによって行われています。現在は天井などが痛々しい状況で、修繕の為に見学料を積み立てているそうです。ご興味のある方は是非ご協力をして頂けたらと思います。
 午後は宇治平等院とその周辺を自由散策としました。近隣の町並み、お店、暮らし振りなどを見ると、和というものが単に設計士の意図でなく、地域の人々の共通の認識となっていることがよく分かります。街づくりとは共通の認識づくりか。
 反省点として、会費を抑える為に食事代をケチったことと、歩く距離が長過ぎたかと思います。次回はもう少しゆったりしたプランにしたいと思います。
 講習会では「建築確認手続き等の運用改善」をテーマに、講師を東京からお呼びして行いました。また希望の多いテーマを募って 開催したいと思います。

女性委員会 事業報告
女性委員会委員長 田中和子
 6月1に開催の交流研修会は、恒例となりつつある京都への旅行です。新緑の美しい時期を選んで、野村美術館と東福寺を訪れました。禅宗の方丈には古くから多くの名園がみられますが、東福寺の方丈は異色で、その四周に庭園をもっています。1939年に重森三玲氏によって作庭された枯山水式の庭園で、南庭は砂紋によって八海の荒海を、巨石によって四仙島を表現しています。

東福寺 方丈北園にて
ウマスギゴケを植栽した五山が背後に置かれています。北庭と西庭は、もと御下賜門内にあった敷石とウマスギゴケを用いて市松模様に配置した現代的な感覚の庭です。梅雨の頃の雨上がりの苔の美しさは格別ですよ、と案内の方に教えていただきました。紅葉で有名な東福寺ですが通天橋から眺める新緑の渓谷美は心を洗い清めてくれるようでした。
 東山の山すそに広がる南禅寺畔は、古くから別荘が立ち並び風雅な趣きが漂う落ち着いた静かなところです。バスを降りて少しの散策で辿り着いた野村美術館ではわびの精神が息づいていました。

野村美術館にて
帰りの新幹線を待つ間に雨が落ちてきたのもひとつの風情で、どんな季節にどこを巡ろうかと次への期待を抱かせてくれる旅でした。
 1月23日にイラストレーターの川淵長之先生をお招きして秋のパース研修会を開催しました。長年のご経験から生み出したプロの裏技や絵を描くときの気持ちの入れ方など丁寧に教えていただきました。3時間でA3サイズの絵(キッチン、窓際テーブルと観葉植物の空間)を2点仕上げました。 参加者の絵は同じ下図と見本を使ったとは思えないほど様々で個性的な仕上がりとなりました。

パース研修 完成作品
仕事にも役立ちそうなテクニックを学ぶことが出来たとの感想もあり、楽しい中にも実りのある会となりました。今回は水彩絵の具での内観パースの着色研修でしたが、機会があれば課題や画材を変えての企画も考えていきたいと思います。
 平成19年度に発足した女性委員会は4年目を迎えました。京都、奥殿陣屋への見学、スケッチ、パース研修、また陶芸、機織、プリザーブドフラワーの体験など建築士としての能力向上をはかるとともに、親睦を深めることを目的にいろいろな交流研修会を開催しました。5年目以降も、多くの方にご参加いただきまして、楽しくて有意義な会になっていくことに期待感を持っています。
■編集後記
 パソコン操作が苦手な私が、広報委員長をお受けする事になるなんて不安な毎日でした。
 メールを見るたびに四苦八苦、胸はドキドキ………。
 そんな中、お二人の方には心よく(?)手助けを引き受けていただき、無事発行することができました。本当にありがとうございます。
 また、原稿を頂いた皆様方にも深く感謝申し上げます。
 あと一年さらにドキドキの日々が続きそうです。(PC恐怖症かも?)
広報委員長 細川 美智子