半田市都市景観賞 選考総評
選考委員長 瀬口哲夫
半田市都市景観賞は半田市と創立40周年を迎えた愛知建築士会半田支部の共催で1992年(平成4年)に実施されたものである。他の市町村の例を見ると都市景観賞の大半は行政が主導するものであるが、半田市都市景観賞の場合、建築士会半田支部が積極的に職能団体としての役割を果しており、その点でユニークである。
都市景観への関心は近年特に高まっているが、それは乱雑な都市を市民がきらい、美しくて歴史性のある都市への志向が強くなっているからである。都市景観の基本は空気や水と同じように目に見える空間は公共物として考えるべきというところにある。これを公共空間ということができる。従って個人所有の土地であっても、公共空間を壊したり、よごしたりすることは慎まれなければならないということになる。
半田市においても都市景観基本計画の策定作業が1991年より進められており、1992年度には出来上る予定である。これで半田市の都市景観を配慮したまちづくりの基本的な方向が定められることになろう。
一方都市景観を構成する要素は種々あるが、その中で特に重要なのは建築など物的な構築物である。建築になると都市景観を構成する役割だけでなく、建築そのものの良し悪しも重要になってくる。
建築や町並みで代表される都市景観は特定の個人の力でつくられるものではなく、多くの人々の協力と時間の積み重ねが必要である。その意味で一般の人々の都市景観に対する関心の高まりを期待したいところである。
今回の半田市都市景観賞は、4つの部門即ち都市景観賞、チャームポイント賞、文化賞、特別賞に分けられた。建築物が対象となる都市景観賞については過去5年以内に竣工したものという条件がつけられたものの、応募者数160名、対象物件102件にのぼった。以下チャームポイント賞の応募者数は99名、対象物件80件、文化賞の応募者数は35名、対象件数は18件、合計すると応募者数で294名、対象物件については200件の多きにのぼった。他市町村の例と比較するとなかなかの盛り上りが半田市の都市景観賞にあったと考えることができる。
審査は2日間にわたったが、第1日目の書類審査により38点に絞った。単純な得点集計で絞ることをやめ、2日目の現地審査に残したいという支持のあるものも積極的に残した。このため事務局の原案である、1次審査で20数点に絞り込むということができず、現地審査がややハードスケジュールとなった。とは言え写真と現物とでは大きく異なるものもあり、それらについて一つ一つ確認が出来たことは良かった。2日目の午後からは午前中の現地審査をふまえ、2次審査に入った。半田市はさすがに古くからの歴史文化のあるところで、長年都市景観形成に寄与してきたものとして特別賞の対象となるものが、2次審査に数多く残った。
結局半田市になくてはならない風景である運河(中埜酢店及び半田入江周辺)と蔵(太田合資酒倉)及び古い町並み(小栗家本宅)がそれぞれ一点ずつ文化賞に選ばれた。特別賞にはなつかし文化賞としてJR半田駅の明治時代の跨線橋、イベント特別賞として野外彫刻展が開催された任坊山公園が選ばれた。任坊山公園は公園そのものというより広場とセットになった彫刻展が評価されたものである。
チャームポイント賞には大伝根町のピラミッドパワー、乙川駅前児童遊園の“ああした天気になあーれ”(下駄)及び半田市体育館南の階段と“腰かける天使”像の3点が選ばれた。それぞれに特徴があり個性が感じられた。
都市景観賞として7点が選ばれた。レストランバーBuona Seraは小じんまりした秀品、鴉根住宅やナビウッディ半田は集合住宅あるいは戸建住宅団地として手固くまとめられている。グランドボールはこの種の建物にありがちな看板がなく、抑制されたところがよい。斜面地を上手に緑化した青山遊歩道もこの種の計画にありがちなマンネリ化を脱している。自然の面影をたくさん残している七本木池は当初の枠組みからはずれていたが、自然景観が重要であるという審査員の意見に支持された。結果として建築から自然環境まで巾広く選ばれた。都市景観大賞に該当するものは見当らなかった。
入選したものについてみると、予想以上にバラエティに富んでおり、それぞれに魅力がある。今後これらが核となり、半田市の都市景観の向上に大いに寄与することが期待される。最後に2日間にわたり手弁当で参加していただいた愛知建築士会半田支部の役員の皆さんの努力に感謝したい。今後も半田市の都市景観向上のためにこの都市景観賞を継続されることを望みます。
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