蔵の調査

半田支部まちづくり研究会 永田創一

 各種の蔵に共通する問題点としては、まず、蔵を有する敷地が区画整理、道路拡幅によって改変されてしまうことに伴う蔵の取り壊しがあげられる。 この問題は大変大きく、都市機能全体のあり方に関わる。
半田にとってもっとも重要な蔵が、これらの公的な都市計画事業によって破壊されていることは事実です。 また、蔵の立地を見ても、かなり狭い道に面しているものが大半であり今後も面整備などにともなって姿を消す可能性が非常に高い。
 これまでは、都市計画の方が個別の蔵の保存という問題よりも上位にあるため、仕方がないというあきらめに終わっていたといえよう。 しかし、都市計画とは、本来都市全体の機能を向上させるとともに、個々の場所や景観や快適性を高めることを同時に達成すべきものである。 従って道路や面整備の具体的な方法において、個別の地点の状況を尊重した答えを模索することをあきらめるべきではない。
都市計画道路や区画整理事業のような、非常に時間がかかる事業においては、その間に時代の変化が起こり、人々の価値観や事業の目的も変化する。
こうした状況に、ある程度はフレキシブルに対応することで、最終的な都市計画の目的を達成することを積極的に考える必要があり、そのための市民を交えた積極的な議論が必要である。 また、致し方なく重要な蔵などが道路などにかかる場合は、移築や復元などの方策をとることも検討すべきである。
次いで、建物自体が現在抱えている問題としては、伝統的な蔵を維持管理することの困難さがある。一般蔵では、伝統的な工法、素材での維持管理費がかさむため、近代的な補修方法に頼っている例が多い。 これらは、形態的には蔵として存在するが、その魅力はやはり伝統的なものに一歩譲ってしまう。 しかし、現代的な方法でも工夫によっては機能的でデザイン的にも優れた維持管理のあり方も期待できることを示唆する事例もあった。 そのため維持管理の具体的な方法と費用負担のあり方防火対策などの法規的な問題について、具体的な参考となるガイドラインを作ることが必要である。
一方、半田を代表する蔵である醸造を中心とした醸造業は、産業の盛衰、技術の変化等によって、伝統的な蔵を放棄するものが増えてきている。一部には伝統的な蔵でなければ目的とする製品が作れないことを理由に、積極的に維持管理を進めている例もあるが、全体の数からいえば少なく、またその場合でも地震や火災への防災対策が大きな課題となっている。製造業は民間企業の所有物であるが、その存在は半田のまち全体にとっても財産である景観や環境を作り出しているという認識にたって、建物の物理的な維持保全と産業としての育成との両面から、今後のあり方を検討する必要がある。