24防災セミナー報告

防災セミナー2012

講師 西澤泰彦氏 「不都合な事を考える-濃尾地震後の建築界の対応から学ぶ事」

 防災セミナー2012が10月31日に昭和ビルにて行われた。
講師に名古屋大学大学院環境学研究科准教授 西澤泰彦氏をお招きし、「不都合な事を考える-濃尾地震後の建築界の対応から学ぶ事」について伺った。

 今から121年前の1891年に起きた濃尾地震被害の統計と実際はどうであったのかを残された写真から見て取れることを伺えたことが、興味深かった。

 当時、レンガ造の建物が倒れやすいとの報道によりレンガ造の建物が敬遠されたが、震災直後の残された写真からレンガ造の建物だから倒れやすいとは言えず、むしろ施工性の問題で人為的な原因があると当時、学生であった伊藤忠太氏の「地震と煉瓦造家屋」からも言われているというお話を伺い、被害の冷静な分析と対応を心がける事が必要だと言われたことが心に残った。

 日本家屋について英国のコンドル氏は「各種建築物に関し近来の地震の結果」で日本の伝統的家屋は和小屋によって屋根と建物の一体化が強いと評価していた。
以前から耐震技術はあったが、震災後、耐震研究が始まったと言われている。
その頃考えられた木造の耐震化は、柱・梁の変形を防ぐ筋違、基礎・土台・柱の一体化する土台、土台・柱・梁・小屋を一体化する金物補強の技術で、現在とあまり変わっていない。関東大震災では、多くの家屋が焼失し、その後、鉄筋コンクリートや鉄骨造の技術は進んでいったが、木造は停滞したままだった。その結果、阪神淡路大震災で多くの被害が発生したと西澤氏は考えを述べられた。

 過去の震災から学び、日本は多くの木造建築物があることを念頭に置き、自然災害、火災が起きた時を想定していくこと「不都合な事を考えること」が必要であるとの西澤氏の言葉が強く印象に残った。(文・岡本里絵)


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